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池井戸潤の企業小説『七つの会議』の感想 | 企業の不正を内部から描くスカッとしない池井戸作品

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2019年に実写映画化された『七つの会議』の池井戸潤・原作小説を読みました。

映画の番宣を見ると狂言師の野村萬斎、半沢直樹では大和田常務を怪演した香川照之などそうそうたるメンバーを集め派手な映画のようなイメージでいたのですが、中身はもっとじっとり汗をかくような企業の「地獄」を描いた作品でした。

 

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作品概要:『七つの会議』とは

七つの会議 / 池井戸潤

2012年刊行。池井戸潤が描く中堅電機メーカーの不祥事に巻き込まれていく社員たちを描く群像劇。2013年に一度NHKでドラマ化された作品であり、2019年に野村萬斎を主演に実写映画化されたことでも有名。

代表作の『空飛ぶタイヤ』が大企業の不祥事を暴く作品に対して『七つの会議』は中堅企業のリコール隠しそのものが主題。池井戸潤題名でもある逆境からの大逆転劇…ではない魅力を味わえる作品です。


作者:池井戸潤さんについて

池井戸潤さん写真

池井戸潤さんは岐阜県出身の小説家で慶応義塾大学卒業、三菱銀行に就職した元エリートでもあります。『果つる底なき』でデビュー後、銀行ミステリーのイメージが強くつく。

しかし、本人はエンタメ作家として評価されたい想いが強かったため「人」に焦点を当てた作品を書くようになった。

代表作

多くの作品がドラマ化されております。

  • 半沢直樹シリーズ
  • 下町ロケットシリーズ
  • 陸王
  • 民王(➜ 感想記事
  • ルーズベルトゲーム
  • 空飛ぶタイヤ(➜ 感想記事

など


メディアミックス / 関連商品

実写映画『七つの会議』

映画『七つの会議』公式サイト
正義を、語れ。原作:池井戸潤×主演:野村萬斎。大ヒット上映中!

テレビドラマ化もされた池井戸潤の同名企業犯罪小説を野村萬斎主演で映画化。2019年。さんざん池井戸作品をドラマにしてきたチームが作成してることもあり評判は上々です。

映画『七つの会議』予告2

キャスト
  • 八角民夫:野村萬斎
  • 北川誠:香川照之
  • 原島万二:及川光博
  • 坂戸宣彦:片岡愛之助
  • 三沢逸郎:音尾琢真
  • 新田雄介 :藤森慎吾
  • 浜本優衣:朝倉あき
  • 佐野健一郎:岡田浩暉
  • 田部:木下ほうか
  • 淑子:吉田羊
  • 三沢奈々子:土屋太鳳
  • 奈倉翔平:小泉孝太郎
  • 星野:溝端淳平
  • 飯山高実:春風亭昇太
  • 江木恒彦 :立川談春
  • 加茂田久司:勝村政信
  • 村西京助:世良公則
  • 梨田元就:鹿賀丈史
  • 宮野和広:橋爪功
  • 徳山郁夫:北大路欣也

TVドラマ『七つの会議』

土曜ドラマ「七つの会議」|NHKドラマ
NHKドラマに関する総合情報サイト。新作トピックスやドラマ再放送情報はもちろん、放送中のドラマ番組に関するデータも充実しています。

大手電機メーカーの下請けである中小企業を舞台に描かれる、隠蔽と内部告発を題材としたドラマ。2013年放送。全4回。

 

『七つの会議』あらすじ

東京建電は大企業であるソニックの子会社である中堅メーカー。目標達成のために部下を日々詰める営業部長の北川。そんな北川の期待に応えいつも営業成績抜群、社内評価も高い第一課の課長・坂戸がある日「パワハラ」で訴えられた。

訴えたのは坂戸の年上でありながら万年係長で会議中も居眠りをする通称・居眠り八角。どう考えても悪いのは八角なのに坂戸は更迭。坂戸の後任はあとには万年二番手の原島。原島は坂戸の後を引き継ぐなかで会社のとんでもない闇と対峙することに…

どこにでもある中堅企業がどのようにして道を外していくのか?その事件の真相を東京建電社内で行われる「七つの会議」を軸に語る群像劇。

 

主な登場人物

東京建電

八角民夫

「居眠り八角」の異名を持つ。グータラサラリーマンであり万年係長。本作品の最重要人物。

原島万二

営業二課の課長。坂戸の後をついで一課の課長に。会社が抱えるトラブルを解決すべく奔走する。

北川誠

ノルマ達成を部下に強要する営業部長。かなり厳しいが同期である八角にはなぜか甘い。

坂戸宣彦

一課の課長であり営業部のエース。八角にパワハラで訴えられる。

新田雄介

経理部課長代理。

浜本優衣

新田と不倫しておりフラレたのを機に退職を決意。辞める前に社員を空腹から救う案を社内に提案する。

村西京助

親会社のソニックより出向してきてる副社長。

宮野和広

東京建電初のプロパー社長。

ソニック

徳山郁夫

社長。彼が出席する非公式の会議を「御前会議」と呼ぶ。

梨田元就

東京建電に業績拡大を認められソニックの出世コースに。ノルマ達成を部下に押し付けた。

 

『七つの会議』を読んだ感想

会社にはいろんな会議がある

会社勤めをしているとわかると思うが、会社には本当にいろんな会議がある。私も「明日は火曜だから〇〇会議があるなー。めんどくせー」と何度となく思ってきたし、なんなら現在進行形でも思っている。

そんな会社に蔓延る様々な会議を軸にした短編小説が『七つの会議』なのであるが、単行本になる際に1章追加され8つの短編になっている(『七つの会議』のタイトル意味なさすぎる)。

  • 第1話:居眠り八角 – メイン:原島課長
  • 第2話:ねじ六奮闘記 – メイン:三沢社長(取引先)
  • 第3話:コトブキ退社 – メイン:浜本優衣
  • 第4話:経理屋稼業 – メイン:新田雄介
  • 第5話:社内政治家 – メイン:佐野健一郎
  • 第6話:偽ライオン – メイン:北川誠
  • 第7話:御前会議 – メイン:村西京助
  • 第8話:最終議案 – メイン:八角民夫

このように1話毎にメインで語られる主人公が異なる。この1話1話に「定例会議(第1話)」「環境会議(第3話)」「係数会議(第4話)」「編集会議(第5話)」というように様々な会議が登場する。

会議のための会議になってるようなものあれば、「御前会議」のように非公式の会議まで様々だ。しかし、多くの人間がこの会議に振り回されているのがわかる。会社員とは会議をそつなくこなせる奴が偉くなるのだ。

異色の第3話「コトブキ退社」

この作品の中でひときわ異質なのが第3話の「コトブキ退社」だ。この第3話は本編の事件とはほぼ関係なく、不倫につかれてしまったOLが退職前に社内に無人ドーナツを設置するという挑戦を描いている。

何もできなかった優衣が親友の力を借りて社内を説得し無人ドーナツ販売の設置にこぎつける。会社のお偉いさんが不正隠しというネガティブな動きに躍起になっているのに対して、退職を決めたしがないOLが前向きに挑戦している姿はすごく美しい。

この第3話をハイライトに東京建電はドツボに嵌っていく。

スカっとしない池井戸作品

『半沢直樹』『下町ロケット』『空飛ぶタイヤ』などの作品が好きな人にとって本作は肩透かしかもしれない。先にあげたような作品は基本的には中小企業や弱者が大手企業の不正を暴き論破する痛快なエンターテイメントだ。

一方で本作は主人公達が働く会社が巨大なリコール隠しをしている側なのだ。不正をしたもの、不正に気付き訴えたもの、不正を隠ぺいしたもの、不正に気付いたもの、気づかなかったもの…。この不正は放っておくと人命にかかわるような事故を起こす可能性がある。しかし、公表すると会社が倒産するような巨額な損失を計上することになる。

 

こんな時に不正を正すことができるのか?それとも隠ぺいしてしまうのか?

 

決してスカッとすることはありません。しかし、非常にリアルに考えさせられる。『七つの会議』はそんな作品なのです。

 

まとめ

働くとは何か?苦しい時に正しい選択を自分はできるのか?会社でミスをしたとき、思わず隠したくなったことは誰でもあると思います(大体後でバレます)。そのワーストケースを描いた作品が『七つの会議』でした。

「おもしろい」「つまらない」というだけではなく「自分だったらどうするんだろう」を考えさせられる教訓のような小説です。

 

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